ドラクエⅪ 作り話 13
ネタバレ多々含みます。
ご注意下さい。
完全捏造・ファンタジー。
ウルノーガを倒した次の日の朝、僕達は玉座の間にいた。
デルカダール王に呼ばれたのだ。
グレイグさんとホメロスさんもいる。
ホメロスさんの顔色はだいぶ良くなっている。もう心配はないだろう。
王が人払いをしたため、ここには僕達以外はいない。王はみんなに近くに来るように言うのだが、家臣である二人は少し離れたところでひざまづいたまま、近づこうとしない。イラついたカミュとベロニカがそれぞれの腕を取り、王の近くに連れてくる。
「ったく、あんた‼なんて強情なの‼」
ベロニカの力では無理だろう。ホメロスさんは頑なに動こうとしない。
無理に彼の腕を引くベロニカ、かわいい。言ったら怒るだろうけど。
「まさかこのベロニカ様に魔力を無駄遣いさせるつもり?」
ベロニカの手のひらにみるみるうちに魔力が集まる。さすがに観念して、ホメロスさんはやっと僕達の近くにきた。
デルカダール王が口を開く。
「みな、ご苦労だった。覚えていないこととはいえ、わしはウルノーガに操られていたのだ。ウルノーガからわしを救いだし、この国を、世界を救ってくれたこと、感謝する。」
おじいちゃんが王を見る。その目は呆れているようにも悲しげにも見えた。
16年間。王はその間のことを一切覚えていないと言う。
おじいちゃんは覚えていないから、だからといって王に全く非がないとは思ってはいないようだ。
「いいえ、全ては私のいたしたこと。」
ホメロスさんが、口を開く。
「私めがあのウルノーガの甘言により魔に落ち、王をたぶらかしたのです。」
えっ?ちょっと待って、何言ってるの?
「王が魔物に操られていたのはわずかな時間。私は王を貶めただけでなく、勇者を亡き者にしようとしたのです。それはここにいるみなが知っていること、どうか私をすぐにでもお斬り捨て下さい。」
そう言うと後ろに下がり、ひざまづいた。
王は何も言わない。まるでそうだと言っているかのようだ。
「……わしと王、ホメロスの三人で話がしたいのじゃ。外してくれるかな。」
とおじいちゃんが言う。
僕達は部屋を出た。
マルティナが吐き出すように言った。
昨夜、ホメロスさんはおそらく王に斬りかかろうとしたのだろう。
王を殺す為ではない、
全てを背負い、逆賊として死ぬ為に。
デルカダール王が16年間も魔物に取り憑かれ、勇者を悪魔の子と呼び、亡き者にしようとしていた。そんなことが知れたら王の権威は失墜する。王のあとを継ぐマルティナにも影響はあるだろう。王の為にも、民の為にも、大国デルカダールにそのようなことはあってはならないのだ。
「可哀想なくらい、頭の切れる子ね。……グレイグ、あなたはどう思うの?」
シルビアさんに問いかけられたグレイグさんは、何も言えずただ立ち尽くしていた。